高橋由美子-“令和に復活した20世紀最後の正統派アイドル”を追体験できる映像作品!(ライブレポート:前編)
アーティスト・コラム

高橋由美子-“令和に復活した20世紀最後の正統派アイドル”を追体験できる映像作品!(ライブレポート:前編)

2021年12月15日、高橋由美子のライブ映像作品『30th Anniversary Live 令和だ!由美子だ!全員集合!~日本青年館で逢いましょう~』がBru-ray/DVDとしてリリースされる。これは同年6月27日にデビュー30周年を記念して開催された同名公演の模様を収めたもの。コンサート本編を収録したBlu-ray通常盤、DVD通常盤に加えて、特典DVDと特典CDを同梱したデラックス・エディション(生産限定盤)の3形態。特典DVDには、1991年7月25日、日本青年館(旧ホール)で開催された『First Live と・き・め・き’91 お中元まつり』のライブのほぼ全編が初めて収録されている(一部は1991年発売の映像作品『プロモーション~高橋由美子ファースト・ライブ~』で商品化)。

ここでは全国から詰めかけたファンを熱狂させた6月27日のコンサートも模様をお伝えする。

Text: 濱口英樹

■ライブレポート(前編)

「“アイドル・高橋由美子”は生半可な気持ちではできないし、疲労度合いが半端じゃない(笑)。でも、ライブをやる以上はしっかり鍛えて、皆さんに楽しんでいただけるものにしたいです」

 90年4月に歌手デビューし、“20世紀最後の正統派アイドル”と言われた高橋由美子が、昨年リリースしたベストアルバム『最上級GOOD SONGS [30th Anniversary Best Album]』の限定盤付属ブックレット内で語った言葉である。その10年前に発売された20周年記念BOX『Complete Single Collection “The STEPS”20th Anniversary Special Edition』のインタビューではこういうコメントもあった。

「アイドルとしての高橋由美子像は、ほとんどが周りの方たちによって創られたものですが、私自身も周囲から求められることに応えたかったし、そのイメージを壊したくなかった。ですから当時はプロに徹しようという気持ちでやっていました」

 これらの発言を裏付ける、彼女のプロフェッショナリズムが遺憾なく発揮されたコンサートが2021年6月27日(日)に開催された。高橋自身の企画による『高橋由美子30th Anniversary Live 令和だ!由美子だ!全員集合!~日本青年館で逢いましょう~』である。コンセプトは「令和に復活した20世紀最後の正統派アイドル」。92年の全国ツアー『夏だ!由美子だ!全員集合!』と7thシングル「コートダジュールで逢いましょう」(92年)にちなんだ公演名も、91年の1stコンサートの会場だった日本青年館での開催も、すべて高橋の意向で決定した。当時から彼女を応援するファンにとっては、いやがうえにも期待が高まる1日だったことは想像に難くない。

 近年は女優として幅広く活躍している高橋が歌手として単独公演を行うのは、2009年7月に日比谷のシアタークリエで実施したライブ以来、実に12年ぶり。今回はセットリストやチケットに付属する公演パンフレットの内容、グッズの選定、YouTubeを利用した宣伝活動に至るまで、すべて本人が打ち合わせから参加・関与し、進められてきた。

 ステージングは、アイドル時代の振り付けをすべて手がけていたコレオグラファーの三浦 亨が担当。ゲストコーナーにはラジオ番組で共演して以来、親交のある鈴木大介(クラシックギタリスト)と近藤嘉宏(ピアニスト)が出演するなど、アニバーサリーライブにふさわしい豪華なメンバーが集結した。いずれも高橋のたっての願いで実現したもので、積み重ねてきたキャリアと多面的な魅力を感じさせるステージとなった。

 観客を最大収容人数の50%に制限し、万全の感染対策のもと行われた今回のコンサートは昼夜2回公演。入場したファンは、アルバム曲を中心に構成された高橋セレクトのBGMと、本人によるお茶目な場内アナウンスを聴きながら、目前に迫った夢の時間に胸を高鳴らせていた。

 開演は昼夜ともにほぼ定刻だった。人気アニメ『魔神英雄伝ワタル2 超激闘編』の主題歌として今も愛され続ける「Fight!」(90年)のイントロとともに緞帳が上がると、裾が大きく広がった黄色のミニドレス姿の高橋が登場。アイドル時代を彷彿とさせるその姿に色とりどりのペンライトが振られ、大きな拍手が巻き起こる。続いて「笑顔の魔法」(91年)、「だいすき」(92年)と、テンポの速いナンバーを当時の振り付けそのままに披露。往時よりパワーアップしたボーカルはあまたのミュージカル出演で鍛えられた賜物だろうが、激しいダンスやジャンプをしても息が乱れなかったのは、この日のために体力づくりに励んだ成果だろう。

 最初のMCではハプニングもあった。久々のライブに駆けつけてくれたファンと、日本青年館での開催に尽力したスタッフへの謝辞を述べる途中、涙で声が詰まってしまったのだ。過去のコンサートでは滅多に泣かなかった高橋だが、今回は30周年、しかもコロナ禍での開催となっただけに様々な想いが去来したのだろう。「今日はこの会場に足を運んでくれた皆さんと、ここに来られなくて、おうちで応援してくれている方々のためにも、心に残るライブにしたいと思います」と続けて、万雷の拍手を浴びた。

 そして4曲目はミドルバラードの「コートダジュールで逢いましょう」を伸びやかに歌唱。歌詞に登場するグレース・ケリーを思わせるサングラスを小道具として使うなど、女優ならではの演出も心憎い。さらに「すき…でもすき」(95年)、「Good Love」(93年)、「友達でいいから」(94年)と、自身が主演した人気ドラマの主題歌が3曲続くが、おそらくファンはキュートなヒロインを演じた“女優・高橋由美子”の記憶と重ね合わせて、その世界観に浸っていたのではないか。

(後編に続く)