高橋由美子-“令和に復活した20世紀最後の正統派アイドル”を追体験できる映像作品!(ライブレポート:後編)
アーティスト・コラム

高橋由美子-“令和に復活した20世紀最後の正統派アイドル”を追体験できる映像作品!(ライブレポート:後編)

Text: 濱口英樹

■ライブレポート(後篇)(前編から続く)

 自身が主演したドラマの主題歌を3曲続けて歌った高橋は「友達でいいから」のアウトロで舞台の奥に姿を消すが、入れ替わるようにステージにはグランドピアノとギタースタンドが登場。やがて赤のオフショルダーのパンツドレスに着替えた高橋が、この日のゲスト、鈴木大介・近藤嘉宏とともに現れた。登場時のBGMは3人が親交を深めるきっかけとなったNHK-FM『気ままにクラシック』のテーマ曲(*商品映像では割愛)。壇上では番組出演時(2002~04年)の裏話やプライベートでの交流など、気の置けない関係であることを窺わせるトークが繰り広げられ、高橋もリラックスした表情を見せる。

 実はこの3人、高橋の20周年記念BOX『The STEPS』(2010年)に新録音源として収録された「瑠璃色の地球」(松田聖子のカバー)でもコラボレーションしている間柄。但し、人前での共演は今回が初めてということで、歌と演奏に関してはそれぞれ緊張もあったようだ。コロナ禍の現在、「夜明けの来ない夜はないさ」と歌う同曲は人々を励ます歌として再注目されているが、高橋は表情豊かなボーカルで観客を魅了。その後もトークを交えながら、自作詞のバラード「A Song For You」(94年)と人気曲「yell」(93年)のアコースティック・バージョンをしっとりと歌い上げた。前者は高橋、後者は鈴木と近藤による選曲だったが、彼女の非凡な歌唱力を存分に味わえるコーナーだったといえるだろう。

 コラボ3曲目の「yell」では1コーラスの後、鈴木と近藤のソロ演奏を挟んでバンドが加わり、ビートの効いたシングル・バージョンにスイッチ。その間に衣装を着替えた高橋は白いミニドレスにスニーカー、ポニーテールという、これまたアイドル時代を思わせる姿で現れ、しっとりから一転、パワフルな歌声を聴かせてくれた。演奏後、ゲスト2人を送り出した高橋は今回のステージを支えるバンドメンバー(キーボード&バンドマスター:上杉洋史、ドラム:藤原佑介、ベース:北川淳人、ギター:山崎 淳、マニピュレーター:守尾 崇)を1人ずつ紹介。彼らと軽妙なトークを交わした後、「Good-bye Tears」(94年)を歌い始める。

 そこからアッパーチューンを畳みかけた終盤は圧巻の一語だった。冒頭の3曲と同様、“アイドル・高橋由美子”の本領発揮と言っていいだろう。ライブの定番曲である「PEACE BOMBER」(91年)では「ここでノらないと、盛り上がれないよ!!」と煽りを入れつつ、激しい振り付けを完璧に再現。本編最後に披露した最新曲「風神雷神ガール」(2020年)ではステージを左右に動き回り、総立ちの観客を惹きつけた。「俺たちのGood-Pが帰ってきた!」――。当時を知るファンはそう感激したに違いない。

 熱狂の渦と化した会場は、高橋やバンドメンバーがステージを去った後も拍手を止めなかった。感染対策で「アンコール!」の声が出せないため、ペンライトやマフラータオル、うちわを振り続ける観客もいる。やがてサイレンの音が鳴り響き、ステージ上をコレオグラファーの三浦 亨と、アシスタントの水田陽子がドライアイス入りの鍋を持って走り抜ける。それがアンコール開始の合図だった。

 この日の公演名をデザインしたお気に入りのTシャツに、デニムのショートパンツを合わせて登場した高橋は「アチチッチ-fire version-」(92年)と、デビュー曲「Step by Step」(90年)を立て続けに披露。MCでは「30年もやってこられたのは自分にとって奇跡。今日はみんなの愛をいっぱいもらいました」と述べるうちに感極まって涙ぐむ一幕もあった。

 惜しみない拍手が送られるなか、アンコールの3曲目は昨年実施されたリクエスト投票で1位を獲得した「Fight!」を再び歌唱。応援に駆け付けたアイドルグループ、夢∞NITY(Dream Infinity)の3人(髙乃彩愛、石井 栞、後藤 楓)と並んで何度もハイジャンプをするなど、ノリノリのパフォーマンスで場内を沸かせたが、その姿はどう見ても現役アイドルそのもの。最後に、興奮冷めやらぬ客席をバックにメンバーと一緒に記念撮影を行った高橋は何度も手を振り、感謝の言葉を重ねて約100分のコンサートを締めくくった。

 来場がかなわなかった多くのファンからの声に応えて、この日の公演を収録した映像作品の発売が決定した。高橋のライブ映像が商品化されるのは『Tenderly TOUR ’94』以来27年ぶりのこと。「令和に復活した20世紀最後の正統派アイドル」の卓越したパフォーマンスは必ずや視聴者を感動させることだろう。

【公演名】高橋由美子 30th Anniversary Live 令和だ!由美子だ!全員集合!~日本青年館で逢いましょう~

【日時】2021年6月27日(日)

(第1部) open 13:30 / start 14:30 (第2部) open 17:15 / start 18:15

【会場】日本青年館ホール(東京都新宿区霞ヶ丘町4-1)

【内容】約100分のステージ(アンコール含め、全16曲を歌唱)

【動員】2回公演で約1,200名(最大収容人数の50%)

【出演】高橋由美子 ゲスト:鈴木大介(クラシックギタリスト)、近藤嘉宏(ピアニスト)、夢∞NITY

【演奏】 上杉洋史(バンドマスター、キーボード)、藤原佑介(ドラム)、北川淳人(ベース)、山崎 淳(ギター)、守尾 崇(マニピュレーター)

【ステージング・振付】 三浦 亨

【企画プロデュース】 高橋由美子、グランパパプロダクション

【協力】 ビクターエンタテインメント

【ライブ制作】 ビクターミュージックアーツ

[セットリスト]

M01. Fight!(2ndシングル/1990年)

M02. 笑顔の魔法(3rdシングル/1991年)

M03. だいすき(9thシングル/1992年)

M04. コートダジュールで逢いましょう(7thシングル/1992年)

M05. すき…でもすき(17thシングル/1995年)

M06. Good Love(10thシングル/1993年)

M07. 友達でいいから(13thシングル/1994年)

<ゲストコーナー> 共演:鈴木大介(ギタリスト)、近藤嘉宏(ピアニスト)

M08. 瑠璃色の地球(オリジナル:松田聖子)

M09. A Song For You(7thアルバム『Tenderly』/1994年)※高橋由美子 作詞曲

M10. yell(12thシングル/1993年)

M11. Good-bye Tears (14thシングル/1994年)

M12. PEACE BOMBER(2ndアルバム『PEACE!』/1991年)

M13. 風神雷神ガール(30周年記念アルバム『最上級GOOD SONGS』/2020年)

<アンコール>

M14. アチチッチ-fire version-(8thシングル/1992年)

M15. Step by Step(1stシングル/1990年)

M16. Fight!(2ndシングル/1990年)