稀代のエンターテイナー、フランク永井
流行歌・コラム

稀代のエンターテイナー、フランク永井

 昭和が生んだ大歌手・フランク永井の新しいCD BOXが2月14日に発売される。「有楽町で逢いましょう」等の代表的なヒット曲はもちろん、カバー・ソング、ナイトクラブ・ステージの実況録音まで、全114曲がCD6枚に収められ、さらに解説書・歌詞付きのプレミアムな豪華版である。タイトルもズバリ、『フランク永井・プレミアム・セレクション』。

 フランク永井は1955(昭和30)年にジャズ歌手として、「恋人よわれに帰れ(Lover, Come Back to Me)」のカバー(歌詞は英語+日本語)でデビューした。それから4作ほど海外曲のカバーが続いたが、デビュー翌年に歌謡曲歌手に転向する。それが転機となり、’57(昭和32)年発表の「有楽町で逢いましょう」が大ヒット。一躍スター歌手の仲間入りを果たす。フランク永井初期の大ヒット曲といえば「東京午前三時」、「夜霧の第二国道」、「羽田発7時50分」などと、いわゆる都会派歌謡の“ムード歌謡”というジャンルを確固たるものにした名曲が並ぶ。それゆえ、フランク永井といえばムード歌謡というイメージが強いかも知れない。

 が、フランク永井は決してムード歌謡だけの歌手ではない。都会的な大人のスタイルをかっこよく歌うのはもちろんだが、抒情的な歌ではあふれる詩情を情感込めて、愛の歌は優しく甘く、別れの歌は切なく哀しく、ハッピーな歌はとびきり楽しく、あらゆる歌を色彩豊かに歌い上げて人々を感動させる、希代の名歌手なのである。今回発売のプレミアム・セレクションではそんなフランク永井の多彩な魅力を紹介すべく、様々な個性を持つ歌を選んだ。ヒット曲として記憶されてはいない名歌唱も多く収録されている。

 フランク永井の魅力を語る上で欠かすことができない重要な要素がもう一つある。それはライブ・パフォーマンスの素晴らしさである。司会者を置かずに1人で進行し、自身のヒット曲のみならず幅広いジャンルの歌を歌い、ウィットに富んだトークで観客を楽しませる、というステージングのスタイルは、日本ではフランク永井が確立したといわれる。1960年代始めまで全盛であった歌謡ショーを、「魅せるステージ」に深化させた新しいスタイルは、各方面で大絶賛を浴びた。

 今回のプレミアム・セレクションには、「ベラミのフランク永井~京都ベラミの実況録音~」という、約90分に渡るライブ音源がCD2枚に渡って収録されている。このライブは1972(昭和47)年に行われ、同年に『フランク永井 at BELAMI』というタイトルで4チャンネル・ステレオ・レコードが、『ベラミのフランク永井~京都ベラミの実況録音~』というタイトルでカセットテープが発売された。今回収録されているのは後者のカセットテープ発売のものである。レコードは1枚ものであったがカセットテープは2本組で、曲数がレコードより多い全31トラック。今回初めてデジタル化された。

 ベラミは京都市内にあったナイト・クラブ。コンサートホールではないので、「ベラミの実況録音」には他のリサイタル録音では味わえない、独特の臨場感がある。聴衆の歓声や拍手が入っているのはもちろんだが、それらに加えて、お酒が提供される空間独特のざわめきまでそのまま入っているからだ。飲食を楽しみながらステージに興ずるお客さんたちと、フランク永井との掛け合いは、いかにもナイト・クラブらしい。ホールやライブハウスでは醸せない生々しさなのである。

 ステージ進行も、お客さんのリクエストに応えながら進めるという点で他のリサイタルとは異なる。関西・京都らしい歌を多く歌いながら定番曲はしっかり押さえ、お客さんを一人ステージに上げて「東京ナイト・クラブ」をデュエットするという名物コーナーもしっかり組み込まれている。そしてフランク永井お得意のトークもどこかテンションが高く、ときに艶っぽい大人の諧謔でお客さんを笑わせ、場を盛り上げてゆく。あふれるユーモア、観ている人には絶対に楽しんでもらわなければならないというステージ精神。真の、そして稀代のエンターテイナー、ここにありである。

 

 

CD6枚組ボックス『フランク永井・プレミアム・セレクション』の収録内容などの詳細はコチラ

(通販限定商品 2024年2月14日発売)

               『フランク永井・プレミアム・コレクション』商品写真