名歌手「佐良直美」の魅力
デビュー曲「世界は二人のために」で鮮烈なデビューを飾った佐良直美。同曲が発売されたのは1967(昭和42)年5月のこと。美空ひばりが「真赤な太陽」で、石原裕次郎が「夜霧よ今夜もありがとう」で大ヒットを飛ばしていたのを始め、ザ・スパイダース、カーナビーツらのグループ・サウンズ陣も台頭し、鶴岡雅義と東京ロマンチカ、黒沢明とロス・プリモスらの大活躍でムード歌謡も全盛期を迎えていて、ヴァラエティ溢れる流行歌が花開いた時期でした。
「世界は 二人のために 」は発売当初は地味な動きだったといいます。しかし結婚式で歌われるようになってジワジワと人気が広がり、秋を迎える頃には大ヒット曲になっていたとか。そう、昭和時代の結婚式で歌われた歌のヒット・チャートがあるとすれば、この曲は間違いなくダントツのNo.1であったでしょう。佐良直美はこの年の『日本レコード大賞』で新人賞を受賞、またNHK『紅白歌合戦』にも初出場し、一躍スター歌手の中入りを果たしました。1969(昭和44)年には「いいじゃないの幸せならば」で日本レコード大賞を受賞します。
これ以降の活躍は「飛ぶ鳥を落とす勢い」という表現では不十分なほどで、テレビ、ラジオ、ステージで佐良直美が出演していない日はないといっても過言ではありませんでした。デビュー直後にレギュラーに抜擢されたNHKテレビ『音楽の花ひらく』では抜群のMCセンスも発揮。以降テレビだけでもNHK『世界の音楽』、TBS『歌のグランプリ』、日本テレビ『最後のおたのしみ』などにレギュラー出演し、1972(昭和48)年以降、NHK『紅白歌合戦』において紅組司会を通算5度の司会を務めています。
そんな佐良直美の歌手としての軌跡をたどる、新しい5枚組CD-BOXが発売されました。題して「もっと…佐良直美 スペシャル・コレクション」。5枚のCDに、佐良直美のオリジナル・ヒットをはじめ、多くのカバー歌唱曲を収録しています。
CDディスク1と2には佐良直美のオリジナル曲を集めました。単にシングルA面曲を並べただけでなく、「世界は二人のために」のB面曲「愛は哀しく」、「いいじゃないの幸せならば」の同「涙のおさけ」といった、B面曲の名曲も今回初めて紹介しています。ヒット曲のほとんどはCD化されている佐良直美ですが、それら隠れた秀作が11曲も初めてCD化されました。
ディスク3から5まではカバー曲集です。日本のフォーク、歌謡曲を集めたディスク3、昭和の流行歌を集めたディスク4、そして世界の名曲ヒットを取り上げたディスク5と、バラエティに富んだ佐良直美の魅力をお楽しみいただけると思います。特にディスク5では収録曲20曲のうち、15曲が英語詞による歌唱で、デビュー前から日本ジャズ・ヴォーカルの草分けである水島早苗に師事して培ったジャズのフィーリングが存分に発揮されている名唱のオン・パレード。このディスク5の20曲のうち、18曲が今回初めてCD化された貴重な音源たちです。それらをお聴きいただければ、佐良直美が名歌手として支持され続ける理由の一つを鮮烈に実感できることでしょう。