MINMI『シャナナ☆』はレゲエ界の“ボヘミアン・ラプソディ”
アーティスト・コラム

MINMI『シャナナ☆』はレゲエ界の“ボヘミアン・ラプソディ”

 MINMIの初期名盤3作『Miracle』『imagine』『Natural』が貴重なボーナス音源&映像付きでリイシューされた2024年夏。そのブックレットインタビューでも熱弁していた代表曲『シャナナ☆』(※リイシュー版『Natural』[Deluxe Edition]にもボーナストラックとして収録)が、NHK『うたコン~星降る夜のコラボ祭り』やTBS『音楽の日2024』でド派手にパフォーマンス披露され、再び大注目を集めている。

 今やジャパニーズレゲエシーンのみならず、あらゆるジャンルのアーティストのライブでお目にかかるようになった、演者と観客が一丸となってタオルを振り回す光景。前述の『うたコン』でも細川たかしをはじめ豪華共演者の皆さんが『シャナナ☆』に合わせてタオルを振り回していたが、あのレゲエやソカの本場のノリが日本のライブシーンに浸透した大きなきっかけは、MINMIの『サマータイム!!』や彼女が湘南乃風の為に手掛けてきた楽曲群、そして『シャナナ☆』の存在であった。

 そんな日本のJ-POP史を語る上で欠かせない名曲『シャナナ☆』は如何にして生まれたのか。2007年2月にトリニダード・トバゴで開催されたカリブ音楽の頂点を決める大会「ソカ・モナーク」へ出場し、ソカ界のスーパースター的な存在であるマシェル・モンターノと披露する為に制作した「Sha na na~Japanese wine~」を日本語版にアレンジした音源が『シャナナ☆』なのだが、MINMIは「王道のソカに日本の祭り感を入れよう」と、チャンカチャンカチャンカチャンカ♪といった日本の祭り囃子を想起するサウンドを投入。その結果、ウェディングソング感のあるメロディとストリングスから始まり、一気にソカのリズムが走り出したかと思えば、和のテイスト全開のお祭りモードへ。さらにドラマティックすぎるブリッジから、誰もがタオルを振り回しながらはしゃがずにはいられないサビへと展開するという、まるで組曲のようなダンスナンバーを完成させるに至った。

 『シャナナ☆』を初めて聴いた17年前の夏(2007年7月18日リリース)。ひとつの楽曲にロックやオペラなどあらゆる音楽要素をぶち込んでミュージカルのような大名曲に仕上げてみせた、かのクイーンの『ボヘミアン・ラプソディ』同様の衝撃を受けたことを今でもよく憶えている。

 なお、MINMIは前述のブックレットインタビューで『シャナナ☆』の歌詞について以下のように語っている。「自分の中でいちばん拘ったところは「愛は言葉じゃないことが 僕と君との合言葉♪」というフレーズで。あのメロディーを生み出すことと、あのメロディーにあの歌詞をハメるということ。それは頭で考えて出来ることじゃなかったんですよ。よくミュージシャンの方が仰っている「降りてきた」という状態をつくる為に頑張ったことをめっちゃ憶えてます。「あのメロディーと言葉がぴったりハマる最適解、降りてこい!」と願い続けて(笑)。あのフレーズが出てきたときは「これは宇宙か神様からもらった言葉だな」って本当に思いました。だから『シャナナ☆』は凄いパワーがあるんじゃないかなって思っているんです。」

 そんな神懸かり的なメッセージとの出逢いもあって、発売から17年経った今も聴く者たちの心を躍動させ続けている名曲となった『シャナナ☆』。奇しくも初期名盤3作『Miracle』『imagine』『Natural』が最新デジタルリマスタリングを施してリイシューされたこの夏、改めて注目してみてほしい。また、MINMIのライブでは、先の音楽特番での盛り上がりをも上回るとんでもないお祭り感を味わえるキラーチューンになっているので、現在開催中の全国ツアー【MINMI Live Tour 2024 “The Songs of Freedom”~自由への旋律~ 序章 翼】やその先にも行われるであろうライブやイベントにも足を運んでみてほしい。

取材&テキスト:平賀哲雄