歌謡曲の悦楽!フランク永井『ステレオ・ハイライト・シリーズ』の魅力
ビクターが初めて歌謡曲系のステレオ30cmLPレコードを発売したのは昭和39(1964)年のこと。オリンピックが初めて東京で開催された年である。レコードの品番の頭文字には「SJV」の3文字が振られた。そのSJV品番の第1回発売は、昭和39(1964)年2月20日で、記念すべき第1作目は『フランク永井 ステレオ・ハイライト』(SJV-1)であった。ステレオ・ハイライト・シリーズは翌月以降も発売が続く。和田弘とマヒナスターズ、橋幸夫、吉永小百合、三沢あけみ、松島アキラ、中尾ミエ、松尾和子と、錚々たる顔ぶれのスターたちのタイトルが相次いだ。
それまでも25cmサイズのステレオLPレコードは発売されていた(昭和35年発売開始)。品番の頭文字は「SLV」で、8曲入り1,300円。これが30cmのSJV品番 になると12曲入りになって1,500円。価格差は200円なのでこれが大いに売れた。スター・アーティストが次々と続編を発売することになるのである。
『フランク永井 ステレオ・ハイライト 第2集』が発売されたのは、第1作目から5か月後。前作は既発のヒット曲のみで構成された内容であったが、第2集は違った。4曲の新録音(当時は新吹込といったが)の楽曲が収録されたのである。このことは多くの歌謡ファンを驚かせた。オリジナルの新曲はシングルレコードとして発売されることが当たり前の時代であったからである。LPレコードで新曲(オリジナル曲)が聴けるということは一般的ではなかったのだ。フランク永井はステレオ・ハイライト・シリーズを全6作発売しているが、この流れは6作目まで続いた。
それらの新吹き込み楽曲たちはほとんどがCD化されておらず、当時のLPでしか聴くことができなかった貴重音源である。が、今は音楽配信サービスで聴くことができる。参考までにそれら貴重音源は下に列記しておくので、是非チェックして欲しい。錚々たる作家陣たちによる、隠れた昭和の名曲ばかりなのである。これぞ、悦楽!
なお、昭和33年から発売されていた25cmLP(モノラル録音)のフランク永井シリーズ『魅惑の低音』も今年春から音楽配信サービスで公開された。いずれも発売当時は10曲入りであったが、第1弾配信アルバムには“デラックス”と銘打ち、CD化されていなかったB面曲などを多く加え、なんと全22曲のヴォリュームなのである。現在、第7集まで配信展開されているが、アルバムでしか聴くことができない曲も多くあるので、ぜひ一度聴いていただきたいと思う。第8集以降も今後順次配信アルバムとして公開してゆくので乞うご期待。
ちなみにその『魅惑の低音』のLP第1弾には、「有楽町で逢いましょう」、「夜霧の第二国道」、「公園の手品師」などの大ヒット曲が10曲収録されていたが、すべての曲の冒頭にフランク永井の語りが入っているという貴重音源である。もちろんその語りもすべて配信版『魅惑の低音 デラックス』に収録されている。
フランク永井の『ステレオ・ハイライト』シリーズにのみ収録されていた楽曲一覧
<ステレオ・ハイライト 第2集>
新大阪小唄 (作詞:井田 誠一/作曲:鈴木 庸一/編曲:寺岡 真三)
さすらいの雨が降る (作詞:吉川 静夫/作曲:平川 浪竜/編曲:佐野 雅美)
男 (作詞・作曲・編曲/平岡 精二)
頬をよせあい灯を消そう (作詞・曲:横山 澄人/編曲:竹村 次郎)
<ステレオ・ハイライト 第3集>
東京ラブタイム (作詞:山上 路夫/作曲:鈴木 庸一/編曲:寺岡 真三
郷愁 (作詞:清水 みのる/作曲:平川 浪竜/編曲:竹村 次郎)
愛する (作詞:山上 路夫/作・編曲:山本 直純)
<ステレオ・ハイライト 第4集>
琴の雨 (作詞:相馬 詩彦/作曲:平川 浪竜/編曲:竹村 次郎)
夢のワルツ (作詞:宮川 哲夫/作・編曲:飯田 信夫)
東京バカンス (作詞:吉川 静夫/作・編曲:豊田 一雄)
<ステレオ・ハイライト 第5集>
あの娘は何処に (作詞:岡田 教和/作曲:小畑 実/編曲:寺岡 真三)
悲しみのスーツケース(作詞:清水 みのる/作曲:今井 秀/編曲:竹村 次郎)
銀の十字架 (作詞:木賊 大次郎/作曲:成田 武夫/編曲:竹村 次郎)
夜の歌 (作詞:木賊 大次郎/作曲:猪俣 公章/編曲:竹村 次郎)
<ステレオ・ハイライト 第6集>
小指 (作詞:木賊 大次郎/作・編曲:渡久地 政信)
もんく (作詞:中村 メイ子/作・編曲:神津 善行)
長いまつげ (作詞:宮川 哲夫/作・編曲:渡久地 政信)