2025年、POiSON GiRL FRiENDはキャリアの新たな局面を明確に刻み込んだ。
POiSON GiRL FRiEND(以下PGF)にとって2025年は、キャリアの新たな局面を明確に刻み込んだ一年となった。夏に敢行された大規模なヨーロッパ・ツアーと秋の北米ツアーはいずれも大盛況。単なる「再発見」や「再評価」のレベルを越えて、現在進行形で創作/ライブ/DJ活動を行なうアーティストとして、世界中のリスナーに受け止められていることを証明してみせたのだ。
そうした海外での熱狂に呼応するかのように、日本国内でもようやく過去作品のリイシューが本格的に動き始めた。8月2日には1stフル・アルバムの『SHYNESS』(1993年)と2ndフル・アルバムの『LOVE ME』(1994年)がアナログとCDでリイシュー。PGFのマスターピースとして評価が高い1stミニ・アルバムの『MELTING MOMENT』(1992年)も、タワーレコード限定という形で11月26日にCD復刻が実現したのだ。
そして2025年末、『MELTING MOMENT』のCDリイシューに合わせ、日本では配信番組への出演や貴重なライブ、インストアでのトーク・イベントが開催された。日本でPGFを目撃できる数少ない機会となったそれらの現場の様子を、ここで簡単にレポートしたい。

まず発売日当日の11月26日には、ライブストリーミング番組SUPER DOMMUNEにて「TRANSONIC RECORDS PRESENTS POiSON GiRL FRiEND “FUTURE IS NOW”」と題したスペシャル・プログラムが配信された。これは日本を代表するテクノ・レーベル、トランソニック・レコーズが12月13日に開催するYEAR END PARTYでのゲスト・ライブが決定したことがきっかけで企画された特別番組だ。日本のクラブ系テクノ黎明期から活動してきたトランソニック・レコーズが企画しただけあって、この番組は単なるリリース記念にとどまらず、PGFの活動史と、1989年から93年にかけての日本テクノ黎明期のシーンを重ね合わせながら検証していく、きわめて密度の濃い内容となった。当時のレアなイベント・フライヤーや、1992年2月29日に開催されたライブ・イベント「エンドルフィン・ナイト」の映像など、貴重な資料を参照しつつ、PGFがどのような文脈の中で登場して独自の音楽世界を構築していったのかが丁寧に語られていく。
トーク後のセットチェンジの時間は、ハゼモトキヨシがDJを担当。テクノと渋谷系の狭間に位置していたPGFのポップ性を当時のUKインディ・ギターポップの流れと見事に接続させる。日本のテクノ黎明期から活動し、自身のユニットSigh SocietyではnOrikOをゲスト・ヴォーカルにフィーチャーするなど、昔から親交が深い彼ならではの選曲であった。

22時15分からはいよいよPGFのライブ・パフォーマンスがスタート。ギターに大津真、キーボードにサカエコーヘイを迎えた編成で、約30分にわたる濃密なセットが世界に向けて配信された。演奏は原曲の構造を尊重しつつも、時折空間をカミソリで切り裂くような緊張感と身体性を帯びており、そうしたポストパンク的な音の質感とnOrikOの詞の世界観が、世界中の尖った感性の若者たちから支持される要因であることをうかがわせた。
ライブ後は、トランソニック・レコーズの主宰者である永田一直によるDJ。THE ORB、808 STATE、LFO、OPUS III、オービタルなどの90’sテクノ・クラシックを中心に、終盤ではエンドルフィン・レーベルのサブリミナル・カームの曲もプレイされるなど、90年代初頭のクラブ・カルチャーの雑多な空気感が見事に再構築されており、DJブースの中やフロアで楽しく踊るnOrikOの姿が印象的であった。

DOMMUNEでの興奮も冷めやらぬ12月13日、PGFは中野のクラブ、heavysickZEROで開催された「TRANSONIC RECORDS YEAR END PARTY」に出演。ライブフロアとなったB1FではQUEER NATIONS、くまちゃんシール、KING OF OPUS、Sigh Society、POiSON GiRL FRiENDなど、トランソニック・レコーズと親交が深い(そして海外からも注目されている)アーティストがライブを披露。Sigh SocietyのライブではnOrikOがゲスト・ヴォーカルで登場し、「Reality」を共演するというサプライズな一幕もあった。
超満員のB1フロアのトリとして、21時20分にPGFが登場。DOMMUNEと同じく大津真とサカエコーヘイがサポートを務める。「Slave To The Computer」では、さきほど共演したばかりのSigh Societyのハゼモトキヨシがゲストで登場。キーボードで演奏に参加し、まさにこのパーティーならではのコラボレーションを楽しませてくれた。PGFのライブに欠かせないVJのULTRA∞も今回のために新たな映像素材を仕込み、ライブとしてのスぺシャル感をさらに高めていた。PGFの2025年を締めくくるにふさわしいライブだったと言えるだろう。

だが、PGFとしてはこれで年内のすべての活動が終わったというわけではなかった。12月20日には、タワーレコード渋谷店にて『Melting Moment』リリース記念のスペシャル・トーク&特典会が開催されたのだ。ゲストには、当時のリリース元であるビクターのエンドルフィン・レーベルのA&R、佐藤直行が登壇し、nOrikoとの対談が実現。PGFとの出会いからアルバム制作の裏側まで、当事者ならではの具体的なエピソードが語られた。そのうちの一つを紹介しておくと、実は「HARDLY EVER SMILE(without you)」のPVは、nOrikOの昔からの知り合いである手塚眞監督に当初制作を依頼していたのだそうだ。そして予算などの制作条件も手塚氏からOKが出ていたにもかかわらず、手塚氏のスケジュールの都合で残念ながら実現せず。もし実現していたらどのようなPVになったのか、妄想がふくらむエピソードだ。そしてトークの最後には、2026年は新作を制作するかもしれないということがnOrikOの口から語られた。ぜひ新作の制作に時間を割いていただきたいところではあるが、相変わらずライブやDJ依頼が世界中から殺到しているとのこと。2月28日にはオーストラリアのメルボルンで開催される大型音楽フェスへの出演を予定。日本では2月9日に姉妹オーディオ・ビジュアル・ユニットtamanaramenが主催するイベント『RAMEN CLUB』への出演が決定している。2026年もライブやレコーディングで多忙な年になりそうだ。
トークの後にはCD購入者へのサイン会が実施。ファンと直に交流し、PGFの2025年は締めくくられた。
過去が現在と接続され、現在が未来へと開かれていく。そのプロセスを、PGFは今も更新し続けている。2025年末の一連のイベントは、その事実をあらためて強く印象づけるものであった。
TEXT:小暮秀夫(協力:nOrikO、永田一直、ハゼモトキヨシ)