16歳の少女がトップシンガーへと駆け上がり、表現の深みを増していく過程を堪能できるドキュメント
アーティスト・コラム

16歳の少女がトップシンガーへと駆け上がり、表現の深みを増していく過程を堪能できるドキュメント

音楽ファン必携の豪華映像集が3月5日にリリースされる。岩崎宏美がTBSの番組に出演した際の歌唱シーンを6枚のDVDにコンパイルした『HIROMI IWASAKI 50th TBS Special Collection』である。日本を代表する歌姫のデビューから現在までの軌跡を丹念に追った本企画は万人が知る歌唱力と表現力はもちろん、番組ごとの演出やファッションなど、時代の変遷も体感できる作品となっている。

“天まで響け岩崎宏美”のキャッチフレーズで1975年4月25日に「二重唱(デュエット)」でデビューした岩崎は「ロマンス」「思秋期」「すみれ色の涙」「聖母たちのララバイ」などヒットを連発。ポップス歌手としてだけでなく、ミュージカルやドラマでも存在感を示し、近年はディズニー実写映画『美女と野獣』日本版の吹替を担当するなど、多方面で才能を発揮してきた。

今回のDVDボックスは『日本レコード大賞』『ザ・ベストテン』『サウンド・イン“S”』『8時だョ!全員集合』『ロッテ歌のアルバム』など、TBSの蔵出し映像を7時間超(約444分)収録。番組ごとに編集された各ディスクを時系列で鑑賞できるのも嬉しい構成だ。

全映像を通して感じられるのは、16歳の少女が才能と努力によってトップシンガーへと駆け上がり、キャリアを重ねるごとに表現の深みを増していく過程を堪能できるドキュメントだということ。1975年から2024年まで、どの年代の歌唱映像も存在するのは常に第一線で活躍を続けてきた証であり、それはいつの時代も真摯に音楽と向き合い、研鑽を積んできたからだと言っていいだろう。

見どころ満載の企画だが、特に貴重なのはデビューからおよそ10年間の歌唱シーン。家庭用ビデオが普及する前の映像も最新のデジタル・レストア&サウンド・マスタリングが施されており、リアルタイムで岩崎の活躍を見てきた世代には懐かしい場面との再会に心が躍るに違いない。当時は生放送の歌番組が主流で、ビッグバンドの演奏に合わせて歌っていた時代。その実力を味わえるのはもちろん、司会者との掛け合いや豪華セットも楽しめる内容となっている。

4月25日にデビュー50周年を迎える岩崎は本企画を皮切りにアニバーサリープロジェクトを開始。新曲「永遠のありがとう」を配信するほか、記念コンサートの開催も控えている。その本人へのロングインタビューが2回にわたって、音楽サイト「Re:minder」(https://reminder.top/monthly-2025-01-iwasakihiromi/)にて公開されるので(前編:3月1日、後編:3月2日)、そちらも是非チェックしていただきたい。

(TEXT/濱口英樹)