芸能山城組の音楽性とサウンドトラック「AKIRA」
アーティスト・コラム

芸能山城組の音楽性とサウンドトラック「AKIRA」

 2025年3月19日、芸能山城組の数々の作品が世界で初めてサブスク解禁された。そのお陰で、デビュー作である「恐山」や『AKIRA』のサウンドトラック制作のきっかけになった「輪廻交響楽」などの代表的作品がネットで手軽に聴けるようになっている。

 さらに、3月26日には作者・大友克洋監督によるアニメ映画『AKIRA』のサウンドトラックをベースにしたリミックス作品「AKIRA REMIX」がアナログ化された。久保田麻琴、小西康陽、蓜島邦明の3氏がリミックスした音源は既にCDとして発売済だが、今回のアナログは組頭 山城祥二自らウルトラディープ処理をほどこしたハイパーハイレゾ音源(192khz/24bit)をマスターとしており、従来のCDでは不可能だった人間の基幹脳を活性化させる超高周波成分(ハイパーソニック・サウンド)を収録している。

 この機会に、芸能山城組の音楽性について、考察してみたい。芸能山城組は1968 年、前身の「ハトの会コーラス」によるブルガリア女声合唱に始まる。続いてジョージア(旧名:グルジア)の男声合唱、バリ島のケチャなどの上演を行い、世界初のマルチミュージカリティを実現し、1974 年に山城祥二を組頭として芸能山城組を創立。それ以来、世界諸民族の80 系統に及ぶパフォーマンスを上演してきたアマチュアの立場を堅持しながら活動している芸能集団である。

 その代表作の一つである1976年発表の「恐山/銅之剣舞」は1980年代に一世風靡したニューエイジ・ミュージックをはるかに先駆け、人間の肉声と電子音が融合しロック・呪術・前衛音楽などと渾然一体となって混迷の70年代を切りさいたその音はいまなお先端的。当時、「ミュージックマガジン」の編集長だった中村とうようがプロデュースし、井上堯之、速水清司、大野克夫他などの先鋭的なミュージシャンが参加している。

 そして、神秘のハーモニーが大反響を捲き起こしたCM音楽 「クリネックス」を収録した1987年の作品「黄金鱗讃揚(おうごんりんさんよう)」。ブルガリアン・コーラスから影響を受けたこの作品はその荘厳なコーラスと無垢な天使の映像のマッチングが高く評価され、国際放送広告賞、クリオ国際賞、全日本CMフェスティバル賞などを受賞している。

 タイムリーな話題になるのは、山城祥二のオリジナル作品である「輪廻交響楽」。本作は東洋の輪廻思想を主題に録音芸術の分野に新たな地平をひらいた作品であり、地球上のあらゆる現実音とあらたな電子音を融合させ、エコロジカルなシンフォニー (Ecophony)を誕生させた芸能山城組の決定盤的作品。

本作を聴いた大友克洋が、アニメ映画『AKIRA』での楽曲使用を希望したことで、山城組がその楽曲のサントラを制作することになったという逸話も有名。林立夫、浦田恵司、難波正司、森下登喜彦、今剛などのスタジオ・ミュージシャンが多数参加している。

  今回のサブスクを機会に、芸能山城組の唯一無比の作品に触れて頂きたい。