林 哲司 プロデュース及び関連作品の魅力
シティポップ・コラム

林 哲司 プロデュース及び関連作品の魅力

1973年4月にシンガーソングライターとしてデビューした林 哲司は、今年デビュー50周年を迎えた。それを受けて、今年は、各社から数多くの関連作品が発売されている。ビクターエンタテインメントでは、6月に発売したディスコ・ミュージックにスポットを当てた作品集「ディスコティーク:ルーツ・オブ・林 哲司」に続き、10月に「ビクター・トレジャー・アーカイヴス~林哲司ビクター・イヤーズ」をリリース。石野真子、岩崎宏美、小泉今日子、松本伊代ら女性シンガーに提供した楽曲から、伊東ゆかり、髙橋真梨子、松崎しげるらAORテイストを持つシンガーへの曲まで余すところなく収録した作品集だ。そして、今回、林哲司のプロデュース及び関連作品も併せて発売されている。

では最初に彼のプロデュース作品から見て行こう。1980年11月に発売されたアルバム「SUMMER WINE/林哲司」は、「BRUGES〜ブルージェ」(1973年)、「バックミラー」(1977年)に続く第3作目のソロ作品となり、欧米のAORムーブメントに対する日本側の回答とも言える作品になっている。前年の1979年8月に竹内まりや「September」、同年11月に松原みき「真夜中のドア~Stay With Me」というスマッシュヒットを続ける中で、本作にも竹内まりや、EPOがコーラスとして参加している。竹内まりやに関しては、シングル「二人のバカンス」「イチゴの誘惑」なども提供しているが、EPOについても、1stアルバム「DOWNTOWN」の中で、表題曲をはじめ4曲のアレンジを林が担当している。

また、1982年に発売された「ミスティー・アワー/伊東ゆかり」も彼の初期のプロデュース作品で、後に日本のAOR/シティポップ作品として高い評価を得ている。本作でも、竹内まりや、EPOらが楽曲提供し、井上鑑、林立夫、松原正樹、斎藤ノブらパラシュート関係がバックを担当している。

そして、彼のプロデュースによるコンセプト・アルバムの最高傑作が「風のように/松本伊代」である。シングル“信じかたを教えて”、“サヨナラは私のために”、“思い出をきれいにしないで” という恋愛3部作を収録し、アイドルから女性シンガーに変貌を遂げた彼女のマイルストーン的作品である。

また、「私の歌・俺たちの朝/松崎しげる」は林自身のプロデュース作品ではないが、当時LPのB面6曲全てをアレンジしたコンセプチュアルな作品になっている。松崎のダイナミックな歌唱を引き立てる林の洗練されたアレンジの妙を感じて欲しい。

これ以外にも彼のプロデュースした作品は、菊池桃子、杉山清貴&オメガトライブ、国分友里恵からGOOD BYE APRILなどまで、枚挙にいとまがない。この機会に彼の作品に触れ、そのエバーグリーンな魅力を感じて頂きたい。

星 健一