フィーメル・シティポップ名作選の新たな魅力
シティポップ・コラム

フィーメル・シティポップ名作選の新たな魅力

YouTube,SpotifyなどのDSPを介し、世界中で聴かれるようになった日本のシティポップ。2021年から60W以上発売しているビクターの名盤復刻シリーズ『マスターピース・コレクション』の女性アーティスト編の第二弾『フィーメル・シティポップ名作選』が発売された。今回は、荻野目洋子、松本伊代、遠藤京子(響子)、多岐川裕美、岡安由美子、宮崎美子、障子久美、阿川泰子、美保 純、秋本奈緒美、キララとウララ、MINAKO OBATA、工藤夕貴の作品がラインナップされた。

そして、今回のシリーズでは、海外のミュージシャンとコラボした作品も新たに加わった。ナラダ・マイケル・ウォルデンが全面プロデュースした荻野目洋子『ヴァージ・オブ・ラヴ+1』。ナラダといえば、ホイットニー・ヒューストンやアレサ・フランクリンなどのブラコンのプロデューサーとして有名だが、ロック・ファンにはジェフ・ベック『ワイアード』の名ドラマーとしてお馴染みかもしれない。彼以外にもジャーニーやマドンナの作品に参加しているランディ・ジャクソンやマイケル・ボルトン、マライア・キャリーと共演しているクリス・カモッツィなども参加した本格的なブラック・テイストの洋楽アルバムだ。

また、障子久美『MOTION & MOMENT』は、松任谷正隆がスーパーヴァイザーとして参加し、佐藤博、新川博が主にサウンド・プロデュースしている作品だ。しかし、シーウインドのジェリー・ヘイがアレンジ&プロデュースした4曲も収録されている。現在、シティポップとしての再評価が著しい“TRUTH”には、ジェリー・ヘイ他、ジョン・ロビンソン、ニール・ステューベンハウス、ラリー・ウィリアムス、アレックス・アクーニャなどが参加した素晴らしい米西海岸発のシティポップ作品となっている。

そして、MINAKO OBATA『TRUE PIECE OF MIND+1』。本作はカラパナのサノ・ケンジがプロデュースし、その人脈からジェイ・グレイドン、ビル・チャンプリン、デヴィッド・ガーフィールドなどのLAの敏腕スタジオ・ミュージシャンが参加している。今だから評価されるべき和製R&Bの傑作を是非お聴き頂きたい。

最後に、阿川泰子の異色作『ECHOES+2』。ジャズ・ボーカリストとして、今もなお第一線を走る彼女だが、本作はベーシスト、ピノ・パラディーノのプロデュースによる英国ロックのAORカヴァー集。ピノの他に、スティーヴ・フェローニ、ロビー・マッキントッシュ、メル・コリンズなどが参加し、今もなお古びない大人仕様のクロスオーヴァ―・サウンドを聴かせてくれる。

今回のシリーズの中では、荻野目洋子 “Is It True”、松本伊代 “それから”、遠藤京子 “銀色の夏”、秋本奈緒美“TRICKY” などの楽曲は、日本よりも海外で先にシティポップとして注目され、現在は日本でも評価が高まりつつある。これらの楽曲を含め、今回のシリーズの作品は、いつの時代でも古びることなくマスターピースとして評価され、輝き続けていくのだと思う。