ディスクレビュー
今こそ聴きたい「海や山の神様たち」~ここでも今でもない話
生涯に渡りエコロジカルなメッセージを発信し続けた故・坂本龍一。日本を代表する偉大な音楽家の原点とも言えそうな作品が1975年に発表されている。
六文銭のメンバーでもあった北海道出身の及川恒平が企画・作詞を手掛け、当時、東京藝術大学に在学していた坂本龍一が全曲を作曲、さらに編曲を手掛けたのが坂本龍一と山下達郎。“少年少女合唱団みずうみ”と共に山下達郎ら“シュガー・ベイブ”のメンバーもコーラスで参加している。
まさに日本の音楽界を牽引する賢人たちの力が結集したアルバムといえよう。アイヌ文化が題材となっており、全篇に渡り、自然への畏怖の念と感謝が表され、自然との共生を訴えるメッセージが貫かれている。
近年、数々の文芸作品の中でアイヌ文化が描かれ、2020年には国立アイヌ民族博物館ウポポイもオープン。様々な形でアイヌの伝統とメッセージが発信されている。
坂本龍一はときにポップにときにリリカルにメロディーを紡ぎ、及川恒平の詩を色彩豊かに彩っている。収録曲のひとつ“アイヌの宝物”は、のちに矢野顕子が歌った“YOU’RE THE ONE”の原曲。老若男女、誰もがアイヌ文化の一面を“感じる”ことのできるアルバムとなっており、いまこそ多くの人に聴いていただきたい作品だ。
海や山の神様たち ―ここでも今でもない話―
2007.06.21
アルバム / VICL-62421
¥2,934(税込)
https://www.jvcmusic.co.jp/-/Discography/A005344/VICL-62421.html