徳永二男 楽壇生活60周年記念企画「徳永二男 ハチャトゥリアン ヴァイオリン協奏曲」
2026年に楽壇生活60周年を迎える徳永二男のデビュー盤となったハチャトゥリアンを初デジタル化、SACDで復刻!
弱冠19歳で東京交響楽団のコンサートマスターに就任し天才と呼ばれた若かりし芸術家の熱演記録!他「幻の音源」をカップリング!オリジナル・アナログ・マスターテープに遡り初SACD化!新規序文解説付。原音を追求したマスタリングを実施
毎コン小学生の部で1位と頭角をあらわし、19歳の若さで東響のコンマスに就任しNHK交響楽団のコンマスとして長期にわたり楽団を牽引。常に国内トップヴァイオリニストとして君臨し世界に通じるヴァイオリニストとして現在も楽壇に立ち続ける徳永二男氏の楽壇生活60周年を記念し、デビュー時のビクター音源をSACDで復刻しました。初デジタル化。
各オーディオメーカーによる4チャンネルレコードへの取り組みが盛んだった当時、秋山和慶はビクターとCD-4規格によるレコードを複数録音しており、本作品に収録されている音源は、サン=サーンスを除いてこの一連で録音されているもので、2chではありますが4chの臨場感を再現すべくリマスタリングを施したものです。若き才能溢れる徳永二男と秋山和慶による熱演をご堪能ください。

1971年3月16~18日に杉並公会堂でセッション録音されたハチャトゥリアンの《ヴァイオリン協奏曲》は、日本のクラシック音楽界を代表する二人の偉大な演奏家――指揮者・秋山和慶とヴァイオリニスト・徳永二男――による「青春の記念碑」と言うべき名盤です。録音当時、秋山和慶は30歳、徳永二男は24歳。桐朋学園時代から指揮者とコンサートマスターの関係だった二人は、東京交響楽団の音楽監督とコンサートマスターとして二人三脚で楽団を牽引していました。
ハチャトゥリアンの《ヴァイオリン協奏曲》が選ばれた理由は、1940年作の現代音楽でありながら、当時すでに日本で広く親しまれていたためです。1954年13歳の天才少年・渡辺茂夫による日本初演のあと、辻久子が得意レパートリーとして繰り返し演奏。また、旧ソ連の名手オイストラフ親子やコーガンが来日時に演奏、LPレコードも1971年までにD.オイストラフ(3種)、コーガン(2種)、シェリング(2種)、I.オイストラフ、リッチ、ベルナールと、計10種類もの国内盤が発売されていました。
ビクターが積極的に自社録音を進めていた背景には、1970年に同社音響部門が開発した4チャンネル・ステレオ新技術「CD-4」の普及戦略がありました。装置の普及には上質なソフトが不可欠であり、マズア指揮ゲヴァントハウス管によるベートーヴェン交響曲全集(東独エテルナとの共同制作)、朝比奈隆指揮大阪フィルによるマーラー《交響曲第8番》などが続々と録音されました。
今回が初のCD化・SACD化となりますが、演奏・録音ともに生々しく鮮烈なことに驚かされます。徳永の力強い技巧と若々しいエネルギー、確信に満ちた語り口、迸るように歌われる旋律から溢れ出る抒情性は実に魅力的です。秋山と東京交響楽団の精緻な合奏、輝かしい音色、前進するパワーも「凄まじい」の一言。ハイ・ヴォルテージで民族色豊かなこの名作を徹底的に堪能させてくれます。
続いて収録されたサン=サーンスの《序奏とロンド・カプリチオーソ》は「CD-4」のデモ用のコンピレーション盤の1曲として1973年に発売されたきりだった「幻の音源」です。これがまた驚愕の名演、名録音です。ソリストと指揮者、オーケストラがこれほど緊密なコンビネーションを見せた演奏は稀だと思います。他の演奏に流されず、譜面を自ら読み取った発見に満ちており、敏感なリズムの刻み、スタッカートのメリハリ、クライマックスでの咆哮にその真価が示されています。
さらに今回、秋山が東京フィルを指揮して録音したビゼー《アルルの女》組曲を収録しています。こちらも1975年に一度市販されたきりの「幻の音源」です。ここでは東京フィルを指揮していますが、オペラ・バレエの演奏経験が深いオーケストラの特性を生かし、縦のダイナミズムよりも横の旋律の流れを重視した演奏を聴かせています。尚、この音源は小学校教科書の鑑賞教材として録音されたもので、第2組曲が1970年、第1組曲は1974年と別々に収録されていました。

収録当時の雰囲気を存分に伝える優秀録音をビクター所蔵のオリジナル・アナログマスターテープから最新で復刻を行いました。いずれも貴重な音源です。今回の復刻では、ビクターが温度管理も含め厳重に保管していたオリジナルのアナログ・マスターテープを用い、SACD層用にはDSDでダイレクトに、CD層用には同じくDSD化された音源を基に出来るだけ工程ロスを減らしたピュアな方法で44.1kMzに変換しています。製品化にあたってはスタジオでマスターテープと比較の上、DSD2.8MHz、DSD5.6MHz、DSD11.2MHz、PCMは44.1kHzから192や384等、可能な限りのレートで試聴を行った上で、DSD2.8MHzを採用しました。これは、SACDのフォーマットが2.8MHzのため工程で一番ロスが少ないこと(他のレートでは最終的に2.8MHzに変換するため工程が多くなる)で、楽器の質感や音色が一番アナログ・マスターテープに近かったことによります。もちろん、音楽性を重視した最小限のマスタリングに留めています。そのため、本来のアナログ・マスターテープに極めて近似した音を再現できました。尚、CD層はDSD化音源を使用し調整しています(今回、全工程は広義な意味も含め「マスタリング」という言葉を使用しています)。当時のビクターによる録音技術の粋を集めた素晴らしい音源が、今回の復刻ではまさに蔵出し的な意味合いも十分感じられる出来に仕上がっていますので、現在の技術を用いたこの素晴らしい録音を最大限お楽しみいただけます。
尚、解説書には貴重なLP初出時の各解説と、新規で序文解説を掲載しました。また、ジャケット・デザインにはハチャトゥリアンを採用し、解説書の裏面に秋山和慶指揮の「アルルの女」第1組曲・第2組曲のジャケット・デザインをカラーで収納しています。
TEXT:タワーレコード
<商品情報>
徳永二男 ハチャトゥリアン ヴァイオリン協奏曲