「AKIRA REMIX」の魅力
ディスクレビュー

「AKIRA REMIX」の魅力

 原作の大友克洋が監督したアニメーション映画「AKIRA」が1988年に公開されてから、35年以上が経過した。この「AKIRA」は2020年にオリンピックの開催を迎える前年の東京が舞台となっており、その予言性も話題となっている。同じくサイバーパンクの先駆的作品と言われている映画「ブレードランナー」(監督:リドリー・スコット)が公開されたのは1982年だが、その舞台設定は奇しくも「AKIRA」と同じ2019年である。同系統の近未来SF作品としてカテゴライズされる際に、「AKIRA」は「ブレードランナー」のオマージュとの指摘も見受けられるが、実際は「AKIRA」の原作である漫画が「週刊ヤングマガジン」にて連載が開始されたのは1982年なので、この2作は日米でほぼ同時多発的に生まれた作品と言える。
 その映画「AKIRA」のサウンドトラック「Symphonic Suite AKIRA(交響組曲AKIRA)/芸能山城組」のリミックスが遂に発売されることになった。2022年に大友克洋が自ら企画、プロデュースする全集「OTOMO THE COMPLETE WORKS」(講談社)が刊行開始され、翌年東京と大阪にて「AKIRAセル画展」が開催された。その会場のBGMとして流されたのが、このリミックスである。大友自身が、久保田麻琴、小西康陽、蓜島邦明の3人の音楽家をリミキサーとして選出し、「AKIRA4Kリマスター」を担当したサウンド・エンジニア 名倉靖のコーディネーションの元、3氏のリミックスが制作された。
 このリミキサー3氏の解説をしてみよう。久保田麻琴は“裸のラリーズ”のメンバーとして活動をはじめ、1973年にソロアルバム『まちぼうけ』をリリース、その後、夕焼け楽団とともに『ハワイ・チャンプルー』、『ディキシー・フィーバー』などの日本のロックの先駆的アルバムを発表。90年代より、喜納昌吉、ザ・ブーム、ディック・リー、Monday満ちるなど多くのアーティストのプロデュースを手がける。99年には細野晴臣とのユニット”Harry and Mac”で久々にカムバックし、2000年にはThe Band のレボン・ヘルムやガース・ハドソンなどと共演したソロ作品『ON THE BORDER』を発表。2007年頃より宮古島を中心とした南島の音楽や、阿波踊りなどを紹介するワールド・ミュージック関連CDを制作。また大友克洋作品としては「火要鎮(ショートピース)」のサウンドトラックを制作。TV-CM制作、DJや講演、コンサートやイベントの企画制作も行い、ラジオ番組への選曲なども行っている。
 小西康陽は、1985年にピチカート・ファイヴでデビュー。田島貴男や野宮真貴などが在籍した先駆的なユニットだ。彼の豊富な知識と独特の美学から作り出される作品は世界各国で高い評価を集め、1990年代のムーブメント“渋谷系”を代表する1人。2001年のピチカート・ファイヴ解散後は、作詞・作曲家、アレンジャー、プロデューサー、DJとして多方面に活躍。2011年に「PIZZICATO ONE」名義による初のソロプロジェクトとして、アルバム「11のとても悲しい歌」を発表し、2015年には2ndアルバム「わたくしの二十世紀」をリリース。また、2012年と2017年に発売された八代亜紀のジャズアルバムでは、プロデュースを担当した。
 蓜島邦明は、恐怖感、緊迫した状況、微妙な心理状態などを楽曲で的確に表現できる稀有な日本の作曲家。タモリがストーリーテラーを務めている「世にも奇妙な物語」のテーマソングの作曲家といえば、ほとんどの方はピンとくるのではないだろうか。近年、フジコ・ヘミング、テヴィッド・シルヴィアン等世界的なアーティストとのコラボレーションも累たし、また手掛ける作品もフランス、中国、台湾等海外まで拡大している。2007年には大友克洋監督の映画『蟲師(むしし)』のサウンドトラックが第40回シッチェス・カタロニア国際映画祭において最優秀映画音楽賞受賞。2016年、Amazonプライムにおける日本初のオリジナル作品として「仮面ライダーアマゾン」が発表され、そのサウンドトラックも手掛ける。他にも、「ナイトヘッド」、「クーロンズゲート」、「スブリガン」、「MONSTER」、「マスターキートン」、「ウルトラマンマックス」、「TAR0の堵」などのサウンドトラックを発表。
この3氏による再構築したAKIRAの世界を是非、体験頂きたい。